地域がん登録は欧米などの先進国ではすでに制度化されており、がんの罹患数や罹患率に加え、がん患者の生存率や治療成績など、がん対策の推進とがん医療の向上に不可欠な情報が地域がん登録をもとに収集されています。
例えば、米国では「がん白書 (ACS Cancer Facts & Figures)」が毎年発行されており、また欧州 27 カ国が参加するがん登録データからは、年間約 250 万人のがん罹患者数のうち約 50 万人が希少がん患者であることが把握され、主要ながんのみならず、希少がんや小児がん対策の推進へとつながっています。
これに対し、日本では地域がん登録は各都道府県の事業とされ、全国規模での地域がん登録が行われていないため、比較的信頼のおけるデータを蓄積しているいくつかの府県の 地域がん登録から情報を収集し、全国推計値を算出することで、日本全体のがんの罹患数や罹患率を推計しているに過ぎません。
これでは、地域ごとや日本全体のがんの正確な罹患状況の把握は困難であり、また東日本大震災に伴う原子力災害に対する健康不安もある中で、がんに関する基礎的なデータすらない状況が将来に禍根を残すことを懸合されます。
平成24年3月に厚生労働省がん対策推進協議会により取りまとめられた、国の次期がん対策推進基本計画(最終案)では、「法的位置付けの検討も含めて、効率的な予後調査体制を構築し、地域がん登録の精度を向上させる」「患者の個人情報の保護を徹底した上で、全てのがん患者を登録し、予後調査を行うことにより、正確ながんの罹患数や罹患率、生存率、治療効果等を把握し、国民、患者、医療従事者、行政担当者、研究者等が活用し、やすいがん登録を実現することを目標とする」と明記されています。
希少がんや小児がんを含めたがんの正確な罹患状況を把握し、がん対策の推進とがん医療の向上を図るために、これら国の責務を明記した「地域がん登録法」の早期制定をここに強く要望いたします。